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ぎりぎり君

 
 事の発端は1ヶ月前に遡る。2月半ばのボスとのミーティングで、彼女が突然、

「あと3週間で、このデータを論文にしましょ」

と言い出した。私の場合、論文を書き始めて投稿するまで、通常3−4ヶ月はかかる。文章を書くだけでなく、図や表の体裁も整える必要があるし、何より執筆中実験を完全にストップさせる訳にはいかない。3週間というのは非常にきついのだが、理由を聞いてとりあえず納得した。

 原則として、アメリカの Assistant Professor は tenure-track と呼ばれる5年ないし7年(大学により異なる)の任期付きのポジションであり、tenure、つまりパーマネントの教員(Associate 或いは Full Professor)になるために、レビューを受ける必要がある。

 うちのボスは Stanford で Assistant Professorになって7年目。Tenure のレビューが近々始まるので、そのための業績として、なるべく多くの論文を出しておきたいらしい。通常、投稿中の論文は業績にはカウントされないのだが(投稿するだけなら誰でもできる。しょうもない論文は速攻で却下されるだけの話)、tenure package では投稿中の論文も意味があるとのこと。

「レビューの主査の教授に、『もう1本、3月1日までに投稿する』って言っちゃったのよ」

 だったらもっと早く言ってくれれば良いのに(-_-#

「3月1日は無理でも、私、スペインで行なわれるカンファレンスに参加するために3月10日に出発するから、それまでには出したいわね」

 10日しか違わないやん(-_-#


 大体この人、元々私に輪をかけた「ぎりぎり君」(^o^) 以前にもこんなことがあった。とある小さなカンファレンスを翌日に控えて、私がラボでポスター作りをしていると、ボスが部屋に入ってきた。前日になってまだポスターができていないのは、普通かなり気まずい状況なのだが、

ボス:どお?

ポリ:・・・まだちょっと時間かかりそうです。

ボス:私もまだ全然できてないのよ、明日のトークの準備♪

 ボスのトークは、翌日のカンファレンスの一番目(^_^;



 まあ、とにかく急いで論文を投稿しなければならないことはわかったのだが、この時点でまだ大筋さえもできていなかったので、まずどんなストーリーにするかボスと連日話し合うことになった。データは揃っているので、あとは如何にエキサイティングな話にするか、である。

 ところが、12月に別のポスドクが投稿した論文のリバイスが重なり、ボスはそちらを最優先にしている様子。私をラッシュするわけでもなく、結局アウトラインが決まったのが2月26日。実際に文章を書き始めたのはこの日から。

 3月2日金曜日。非常にラフな第1稿を書き上げ、ボスに渡した。2時間ほどディスカッションした後、

ボス:スタートとしてはいいんじゃない? 私、今晩から週末ずっとスキーに行くから、その行き帰りにでも読んでおくわね。

 ・・・とても明日明日 tenure のレビューを控えている人とは思えない危機感の無さ(-_-) アメリカの締切なんていい加減だし、わたしはこの時点で、ボスがスペインに出発する前に投稿することを諦めたのだとばかり思っていた。

 ところがどっこい、ここから怒涛の1週間が始まるのである。長くなったので、続きは次回。

  1. 2007/03/14(水) 11:53:25|
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