小学校低学年の頃、教科書に「ばーか」などと落書きされたことがある。今から考えれば、きっとある種のイジメだったのかもしれない。だが、「イジメ」なんていう単語を知らなかった私は、落書きした犯人を特定し、そいつの教科書を、給食の残飯用のダストシュートに放り込んでやった。
マヨネーズまみれになった教科書を持って泣いていた彼を今でも覚えている <どっちの方が性質が悪いんだか
殴られたら殴り返した。机の裏にジャムを塗られた時には、筆箱の中に牛乳を注ぎこんでやった。
昨今ニュースやテレビドラマで取り上げられるような、犯人のわからない陰湿なイジメにあったことがないのが幸いしたのか、いつの日からかいじめられることはなくなった。もちろん、親の介入など一切なかったので、自分が親になった今も、子供同士の些細な喧嘩には口を出さないよう努めていた。
でも、今回は違った。
水曜日の夜。長女が私のところに来た。
「バックパックの中に、すごく嫌な物を見つけた」
と言って、四つ折にされた紙切れを差し出した。
開いた途端、それが何かわかって、一瞬凍りついた。
延々と長女の悪口を書いた手紙だった。
"Dear ○○○, I hate you! Isn't that great? Well, I think so!"
"○○○ is jealous, mean, nasty"
思いつく限りの negative words の羅列。下には汚い似顔絵も。
「今日帰るときに、S(クラスメートの女の子)が『誰かがあなたのバックパックに何か入れてたよ』って教えてくれたの」
「オッケー。こういうことを書く人は、自分がこういう人間だ、って言ってるのと同じ。そんな奴のいうことなんか気にしなくていい。大丈夫。明日、お父さん、先生と話してみるから」
長女、涙を浮かべながらも、素直にそれを聞いていた。こっちも、悔しくて涙が出そうだった。
翌朝、早めに家を出て、いつもどおり長女をクラスルームの前まで送り、そのまま職員待合室に直行して担任の Mrs. R を捕まえた。手紙を見せ、最近何か変わったことはなかったか聞いてみた。
Mrs. R、深刻な表情で
"This is not good"
を繰り返し、特に気がついたことはなかったが、今日中にいろいろやってみなければならないと言ってくれた。
午後、娘を迎えに行った妻に、Mrs. R が状況を説明してくれた。
犯人は、予想通り(?) S だった。この子、体も大きく、強気で bossy なタイプ。うちの娘も、チビのくせに何かと仕切りたがるので、これまでにも時々ぶつかることがあった。だったら遊ばなきゃいいのに、と思うのは親の発想で、なんだかんだ言って結構よく遊んでいる。ある日、休み時間にボールの取り合いになり、力で勝る S は、取り上げたボールを娘にぶつけ、娘はオフィスで顔を冷やす羽目になった。
皆のところに戻ると、S が
「あたしが先に取ったんだから、あたしは悪くない」
と主張した。娘は娘で
「あたしが先だ」
と言い張ったところ、周りで見ていたクラスメートたちが娘の肩を持ったらしい。頭にきた S は、例の手紙を書いて、娘のバックパックに入れたのだという。
不穏な空気を察知した S は、Mrs. R に呼ばれる前に、娘に “Sorry” と声をかけ、Mrs. R が問い詰めたときは、
「もう謝ったもん」
と、しれっとしていたらしいのだが、Mrs. R は当然それでは満足せず、反省文を書いてくることを命じたとのこと。
事実がわかってしまえば、たわいない子供同士の諍いといえないこともないし、先生の素早い対応にも感謝している。が、またいつか同じようなことがないとも限らないし、もっと大変なことになるかもしれない。娘が、一人で抱え込まない子であることを嬉しく思うし、自分と同じ思いを他人にさせない子であることを期待する。
こんな重い話にもしっかりオチがあって(^o^)、実は S がその手紙を娘のバックパックに入れたのは、もう2ヶ月も前の話だったらしい。せっかく入れた傑作が全然読まれた形跡もなく、いつもと同じように自分と遊ぶ娘にしびれを切らした S が、自ら墓穴を掘ったというのが真相。
悪意のある手紙に2ヶ月も気づかず、説教され終えた S となぜかまた遊び始めた娘を見て、Mrs. R も
“She is so innocent”
と苦笑していた。Innocent って、アホっていう意味でしたっけ? それともただの能天気?
ま、君はそのまま能天気に育ってくれ。
なにかあったら、全力で守ってやるから、大丈夫(^o^)
- 2008/03/22(土) 04:11:22|
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