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今日も脳天気

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ほんとは全部自分でやりたい

 
 研究者が独立先を探す際、重要な要素の一つになるのが Core Facility の充実度である。Job interview のときに、こちらから聞かなければならない必須項目の一つだ。

 これまで自分が所属してきた大学・研究所の中でも、うちの大学はこの共用機器の施設がとても充実している。自前で買い揃えなくても、多くの一般的な実験を行なう設備が揃っており、私のような独立したての研究者にとっては、有難いことこの上ない。

 設備だけではない。テクニカルスタッフが常駐しており、事前に依頼すれば、ルーティンワークの多くは自分で手を動かす必要もない。

 ルーティンワークに費やす時間を他のことに使えるのだから、便利といえば便利なのだが、実はこれがちょっと曲者。



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 毎週参加させてもらっているKラボの夏休み前最後のラボミーティングで、免疫組織染色がうまくいかないという話になった。


 免疫染色では、組織固定法・界面活性剤の種類や濃度・ブロッキングのやり方・反応時間や温度等、振ることのできる条件はいろいろある。私が知っている限りのコツを伝授しながら感じたのは、

「これって実験を他人にやってもらう場合の弊害だよなぁ」

ということ。


 自分でやっていれば、どの条件を振ればいいか、なんとなく感触でわかるし、ちょっと自分で試してみることもできる。うっかり他人に頼んでしまうと、こちらができることは可能性のある条件を列挙するのみ。後は相手のスケジュールに従い、待つしかないので、結果として余計に時間がかかってしまうこともある。


 トラブルシューティングという意味だけではない。自分でやる代わりに他人に任せるというのは、順調なうちは良いが、なにか想定外の事態が生じたときに、それが驚くべき大発見なのかどうかを判断することが難しくなる。ただの失敗を世紀の大発見と勘違いしてしまう可能性だってある。もちろん逆もある。


 極端な話、


学生: 先生! A遺伝子のノックアウトマウス、体重が野生型より10倍も重い仔が生まれたそうです! Genotyping で遺伝子が欠損していることも確認してもらいました!!


先生: それは凄い。Nature に論文を出すぞ。


学生: (論文掲載後)先生! マウスじゃなくてラットの仔でした!!


なんてことになりかねない <そんなことはない




「わしらの若いときは、ルーティンワークは誰かにやってもらうなんていう発想が無かった」

などという年寄じみたことを言うつもりはない。時間の節約になることは間違いないが、それに頼りすぎると逆に時間をロスすることにもなる。要はバランスが重要なのだと思う。





 もっとも、自分でやればいつも早く原因解明できるかというと、そうとも限らない。

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 大学院修士の頃。とあるキットを使った酵素反応実験がどうしてもうまくいかない。酵素・基質の精製法、濃度や反応条件等、考えうる限りの可能性を試してみたがダメ。キットに添付のポジコンは動いているのに。


 八方手を尽くすこと、およそ一か月。ついに原因が判明した。


 なんと、キットに入っていた EDTA 溶液が蒸留水だった。EDTA は金属イオンをキレートして特定の酵素活性を阻害する。この実験のときは、確か DNA 分解酵素の活性を反応途中で阻害するために入れる必要があったと記憶している(ポジコンはその前段階で止めたような覚えがある)。キットの中身は疑っていなかったので、まさかの結論にラボメンバー全員脱力。当然メーカーに苦情を言って、別ロットの新品キットを送らせたが、原因究明に費やした一か月は戻ってこない。


 このケースでは、自分でやろうが他の人にやってもらおうが、時間のロスはたいして変わらない。それどころか、なまじ自分達の手で原因を究明してしまったがために、予想外の二次災害に悩まされることになった。


 その後しばらくの間、実験が上手くいかないと、自分の腕ではなく物を疑う習慣が大流行。




 料理がまずい場合、十中八九材料ではなく腕が悪いのだということを忘れてはいけない。
 
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  1. 2011/07/26(火) 21:45:22|
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